【BACK FROM THE GRAVE】

(奴らを墓から叩き起こせ!マイ・フェイバリット!)


008【私的日本のサイケデリック10選Aアシッドロック篇】


日本ロック界に潜む至宝。そこ(底)までもぐってきた者だけが手にとることができ る10枚である。ここまでおいで。息の続かない輩はお呼びでない、と彼らは言ってい る。その音はフリーキーだったり時にはポップだったりもするが根底に流れる「奇形 性」はみな同じ。しかしフリークスたちは場合によっては神聖視されるように彼らも また一部の者には聖典として心に刻まれるであろう。どマイナーである。音楽には聞 こえないものもあるかも知れぬ。だがヒットチャートにあふれるへらへらポップス、 あれは果たして音楽であるのか?音符で構成されているかも知れぬ。だがあれらは 「仏つくって魂入れず」の例えそのものではないか?そのような輩とは正反対の世界 を彼らは目指していたのだ。故に現実社会や「業界」やあるいはこの世から消えてし まった者を多数輩出してしまうのも仕方のない事かも知れぬ。もはやジャンルは関係 ない。俺にとってのゴールドディスク(と、今回は湯浅学風に)。

★ザ・ラビッツ「ラビッツの世界」

80年代、スターリンの遠藤ミチロウによって見出された4人のうさぎちゃん。サイケ デリックの浮遊感とロックンロールの高揚感をあわせもつバンドである。カセットの みで発売されたアルバム「WINTER SONGS」(ダビングテープで当時愛聴してました) をいぬん堂なる酔狂なレーベルがレアトラックつきで再発した2枚組。限定500枚。現 在入手困難。ボーカル宮沢正一のうたうシンプルかつシュールかつ悪意たっぷりの言 葉はいわゆる「精薄」(この単語パソコンじゃ変換できないのね今やってみたら)の 人のドロドロした内面のダークゾーンを体現しているようで、「ラビッツ」という無 邪気なバンド名と不気味にリンクする。タイトルからして「ネオーソフト」「バー チャンのバージンでいってみよー」「名犬バター犬君外伝」「聞け!!ジョン!!」 「わ、わ、わ」など、クルッテイル。ただしボーナストラックのビートルズのカバー はかわいい。

★宮沢正一「キリストは馬小屋で生まれた」

こちらは宮沢正一がアコギ1本でうたうライブの音源を集めたアシッド・フォークの 名盤。またもや限定500枚現在入手困難。蓄膿気味の声で「僕頭が悪くて出かけるこ とできない/僕頭が悪くて見つけることできない/窓の中 数をかぞえている いつ来 るか 待っている」とうたわれると、かなりキます。かの狂人シド・バレットの「帽 子が笑う・・・無気味に」(THE MADCAP LAUGHS)に洋の東西を問わず対抗する事がで きる数少ない1枚かもしれない。このあと彼は「人中間」というアバンギャルドなソ ロを発表するのだが(プロデュースはたしかミチロウ)これはあまりにもおっかない 内容なので再発版の購入を見送ってしまった。ので持ってませんもう買えません。好 きな人にはたまらない音だと思うので、どこかの中古盤屋で売っていたらプレミアつ きでも購入をおすすめします。死にます。 ※実はこの3枚、御茶ノ水にあるマニアックなレンタルCD屋「ジャニス」においてあ ります。連続で聞いたら死ぬと思いますけど。

★DEW「布谷文夫LIVE」

「あさぁに、おれのぉ、おんなぁ、いな、いぃいいぃ」とわけのわからない文節でう たわれるヘウ”ィなナンバー「からのベッドのブルース」収録の71年のライブアルバ ム。日本語ブルースサイケの名盤。「枯れ葉は僕を呪い殺す」とか叫んでますぜ。個 人的にはクリームよりも断然こっちである。ボーカル布谷文夫は大滝詠一プロデュー スで「ナイアガラ音頭」なる曲を出しているらしい。聞いたことないけど。アニマル ズも尾藤イサオもひれ伏す超絶カバー「悲しき願い」など、多分DMBQとかのファンに はずどんと来ると思われます。

★頭脳警察「頭脳警察3」

一般的にはセカンドが有名だがあちらがアジテーション中心であるのに対し、この3 枚目は黙示録的な雰囲気が漂っている。詞も曲もどパンクな「ふざけるんじゃねえ よ」にはじまり「滅び得た者の伝説」「時々吠えることがある」「少年は南へ」「無 知な奴らが舞い踊る」「パラシュート革命」など小説のタイトルのような曲名が並 ぶ。基本的にロックバンドの構成なのでどれもテンション高い。この「3」とラスト の70年代ラストの「悪たれ小僧」が甲乙つけがたいズKの個人的ベスト。イッツ・パ ンタックス・ワールド!!!!

★早川義夫「かっこいいことはなんてかっこ悪いんだろう」

元ジャックスのボーカリストによるピアノと生ギターの弾き語りによる、日本ロック 史上最も美しくておっかないアルバム。ジャケの人形を抱えた少女のイラストも強烈 でトラウマ必至。もうほとんどロックとかフォークとかいう次元ではない。電気楽器 は一切使用していないがあの世から響いてくるようなうたは真のサイケデリックかも (かのジャックスがポップに聞こえるし)。本当に自殺直前の精神状態にある人は激 しい音ではなくバロック音楽などを愛聴する、というようなことを聞いたことがあ る。このアルバムはドロドロとしていながらも穏やかなイメージもあるので、これを くりかえし聞いているような精神状態ってのはかなりヤバイと思う。俺はもいいい や。実はあんまり聞きたくない。とかいいつつやっぱり聞いてしまう大好きな1枚。 「かっこいことはなんてかっこ悪いんだろう」というタイトルは未来永劫どんなジャ ンルに対しても通用する必殺の名言だと思います。

★非常階段「蔵六の奇病」

この80年代に出たセカンド(日野日出志のジャケのやつ)はサックスや鍵盤なども 入っているので、ノイズミュージックでありながらフリージャズ的な印象も強い。悪 夢のインプロビゼイション。その辺がサイケデリックだなと感じるところなんです が。何といってもこの頃の非常階段は超変態ライブで名を馳せていて、10代でこのヒ トらのステージ写真を見たときはびっくりしただよ、おら。このCDにも写真が載って いるが何だかわからんが体中ドロドロになった男どもがケツ出して転がってるわメン バーの女の子がしゃがんでオシッコしてるわ(これが当時話題になってた気がする な。なかなか美脚の持ち主だ)の地獄絵図。納豆やら残飯やら痰壷やらもぶちまけて いたらしいので悪臭も物凄かったらしい。聞き所は1曲目の「ゲロ」で、メンバーの1 人が嘔吐しているところを生録しているという世界的に見てもかなり悪趣味なトラッ ク。一生懸命「う”ぇあ”あ”あ”お”ぅ。がぁあ”っ」ってやってます。で、吐き 終ったあとに観客の「お疲れさまでしたあ」って感じの拍手がパラパラと入るのが虚 しくていい。楽屋では「がんばれよ」「おう!」とかやってたんだろうなきっと。

★佐井好子「胎児の夢」

その非常階段のリーダー、JOJO広重氏が「最高のフェイバリット」と豪語するアーチ スト。なにしろ氏は「死ぬまで聴き続ける。そして死んだら地獄で聴く」とまでおっ しゃっている。無人島にもっていくなんてレベルじゃない。音楽に対する賛辞でこれ 以上のものは聴いた事がないよ俺は。巫女系ミュージシャンは他にもカルメン・マキ や浅川マキや中川ラビなどいろいろいるが(なぜかみんな語呂がいい)、究極はこの 人じゃないかという気がする。他の人は「あたしの小指をギロチンにかけて ためし に一度落としてごらんよ/赤い血がでるか 青い血が出るか」とは歌わないもんな あ。スキャットもメチャクチャうまい。エキゾチックな天上音楽。4枚のアルバムを 残して一度消えたが、最近ジョジョ氏のアルバムでポエトリーリーディングで参加し ているらしい。「モダーンミュージック」のHPで読める氏の「心の歌・最後の歌」 は、凶悪なノイズギタリストの仮面に隠されたピュアな音楽ファンぶりが窺える真摯 な音楽コラムです。おすすめ。

★ザ・ルースターズ「DIS」

これは当時ネオサイケとか日本のエコー&バニーメンとか言われいたいた頃の作品だ が、何といっても大江慎也である。大江ちゃん、完全に頭がクラッシュしており、初 期は不安定だがボーカルに力強さがあったがこのあたりではもうただただ不安定なだ け、歌詞をなぞっているだけのようなヘタクソな歌を披露している。でもだから駄目 だってわけじゃなくて、実は滅茶苦茶ハマッた1枚。結果的におそろしく綺麗な音楽 をつくりあげてしまったのだ。特に分裂症的な精神の内面を歌った「サッド・ソン グ」は至高の美しさ。この頃の彼らのライブビデオを見ると、他のメンバーは当時の 大学の音楽サークルみたいなルックスで淡々と演奏しているのに対し、大江慎也の顔 つきは完全に狂人のそれであり、ダンスの不気味さは強烈。ルースターズのトリ ビュートアルバムなんてのもあって結構売れたみたいだけど、ひいきのミッシェル以 外は大江の狂気を体言できるはずもなく、あっというまに飽きて売っちゃった。

★暗黒大陸じゃがたら「南蛮渡来」

歴史的名盤。日本ファンクといえば岡村ちゃん?それもいいけどこちらは全く立ち位 置の異なるアングラ・アシッド・ファンク・バンドである。ボーカル・江戸アケミは額 にフォークを突き刺す、ヘビを食いちぎる、ウンコ垂れ流しながら客席につっこむ (これはさすがに嫌だな。ミチロウですら「脱糞」はしてないもんな)などの変態ラ イブで話題になっていたが(当時のバンド名・財団呆人じゃがたらお春)、もうそう いうことは一切やめて音楽1本で勝負したファースト。とはいえ彼はこのあと精神を 病んでしまいしばらくリタイヤすることになる。おそらくこの時点でも相当あぶない 状態だったんだろうけれども、そのあやうさがボーカル及びアルバム全体に奇妙なグ ルーブを植え付けている。どす黒さという点でいえば黒人よりも勝ってる!最も好き なのは詞曲アレンジボーカルすべてがシャープこの上ない超名曲「タンゴ」(冒頭、 ワン・ツー・スリー・フォーのカウントだけで鳥肌もの!)だが、シンバルがやたら バシャンバシャンうるさく響きそれが妙な酩酊感を醸し出している「アジテーショ ン」やミッドテンポの「フェイド・アウト」もいい。そしてラストの「人類みな兄 弟」「僕たちは光の中でチャチャチャ」「ヤラセロセロセロセロ」と女性コーラス、 子供コーラス、アケミのボーカルが渾然一体となって踊りながら崖っぷちへ突き進ん でいくようなイメージの「葬送行進ファンク」と呼びたい「クニナマシェ」!「死に 行く者は海へなだれこむ」と詞の一説にあるように完全にあちらの世界を視野に入れ ている。「じゃあまた来るね」と子供コーラスで締められるのも今聞くと実にあやう いなあ。アケミ復帰後、グループは「じゃがたら」と改名しクリアなファンクバンド として再出発するが、この淫靡などんどろファンク時代が個人的にはベスト。その後 アケミは精神安定剤だか睡眠薬だかを多量に服用して入浴し、そのまま溺死。この時 の葬儀の様子はワイドショーでも取り上げられてた。見てたもん。まあ妙に納得して たけど。その他2人のバンドメンバーもすでに故人という呪われたバンド。コーラス の南流石はダンサー&振付師として活躍中。三軒茶屋のレコード屋「fujiyama」の看 板には「やっぱ自分の踊り方でおどればいいんだよ」と江戸アケミの言葉がでっかく 飾られている。

★オムニバス「TASTE OF WILD WEST3」(ノイズ・アバンギャルド編)

バンドブーム最盛期、メジャーのレコード会社がインディーズ系のバンドを青田買い していたことがあって、これはその中でも最も狂った1枚。関西のバンドのコンピで 他にも「パンク」」サイケ」篇もあるがぶっとび加減ではこれにはかなわない。ボア ダムズ・思い出波止場の2大大御所、ボア・山塚アイのサイドバンド「U.F.O OR  DIE」(ユナイテッド・フリークアウト・オア・ダイ!カッケー!)、唯一女性ボー カルのサイケデリックバンド「エンジェリン・ヘウ”ィ・シロップ」、そして「ソル マニア」「インキャパシタンツ」「非常階段」のノイズバンド。ボスの非常階段は女 性の「あ”ぁ”ぁ”ぁ”あ”あああ”あ”あ”!!!!」という絶叫とギターと発信 機のノイズがせめぎあう極悪トラック。最初はなんてひどい表現なんだろうと思った が何回か聴いているうちにだんだんとこれは根源的にピュアで美しい「音楽」なん じゃないかと、気がついた。



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