【BACK FROM THE GRAVE】

(奴らを墓から叩き起こせ!マイ・フェイバリット!)


001【私的パンク・アルバム10選】


どうも最近「パンク」という概念がゆるーくなっているような気がする。グリーンデ イとか、別に普通のロックじゃん。エモコアって何?わかりません。今更青臭いけれ ども、やっぱり中指立てて物申すという姿勢は忘れてはいかんと思う。映画でもマン ガでもそういうスタンスを感じるものは消費目的の普通のものと違うし、シンパシー も感じる(っておれに言われてもなあ)。悪魔に魂売らなきゃダメです。あ、いま思 いついたんだけれども「悪魔に魂を売り渡した者」がロックンロールだとするなら ば、「さらにそれを理不尽にとりかえそうとする駄々っ子」がパンクであると。我な がら名言。みんなの心の桐タンスにしまっておきなさい。そいうわけで音楽的にでは なく、スピリッツの面から検証するパンク・アルバム10選をご紹介。

ザ・クランプス「オフ・ザ・ボーン」

彼らこそが共同墓地に埋葬されていた50・60年代の狂ったロックンロール・ゾン ビ・ナンバーをカバーという方法論で蘇生させ解き放った宇宙からの怪光線である。 奴らゾンビどもはおれのようなスキモノの脳みそにかじりつき中枢神経を犯しあちら の世界でしか生きられないようにさせてしまうのだ。指令塔であるポイズン・アイ ビーとラックス・インテリアはどこかの地下アジトで山羊の頭のスープと血のワイン で祝杯をあげているだろう。
ザ・クランプス初期のシングル・コンピレーション。77年のどんどろガレージ・パ ンク・ナンバー「ヒューマン・フライ」(デビュー曲!)をはじめベースレスだから こそ表現できる愛憎に満ちたトラッシュ・チューンがホルマリンつ”け標本のように ズラリと並ぶ。ラックスは今日もマイクをくわえてのたうちまわり衣装をズタズタに 引き裂きTバック一丁で転げ回っているだろう。朝日を浴びて灰になるまでロッキン ・ホラー・ショウは続く。

野坂昭如「マリリン・モンロー・ノー・リターン」

ゆるい歌謡曲テイストの曲もかなり収録されているが、「ウ”ァージン・ブルース」 「黒の舟歌」「大挽歌」「花ざかりの森」などの名曲は各自死ぬまでには必聴のこ と。極めつけは「この世はもうじきおしまいだあ」のリフレインが強烈なタイトル 曲。個人的には日本最強のパンク・ナンバーであると考える。おれがDJならばこの 曲は絶対回す。

仁義なき戦い「オリジナル・サウンド・トラック」

ここのところちょっとバラエティ番組などで安易に使われすぎている気もするが,原 曲の素晴らしさは少しも損なわれるものではない。もともとそれまでのいささか偽善 的な仁侠映画のアンチテーゼとして公開された作品なわけで、出発点からしてすでに パンクなのであった。テーマ曲は言ってみればインスト・パンクあるいは歌のないパ ンク・ロック。ギターウルフのオープニングSEとしても有名。これほど凶悪なホー ン・セクションは他に知らない。

イギー・ポップ「T.V.アイ」

それまでデビッド・ボウイさんがこぎれいにプロデュースしてくれた楽曲を大音量で ぶちまけてしまったのが印象的な「オレはオレだしスピリット」にあふれたライブ・ アルバム。ストゥージズ時代からこのテンションでライブを続けているわけで、いま だに生き長らえているのが不思議である。本物のキチガイには死神もビビるのだろう か。大傑作「神様の愛い奴」で女装した全裸の奥崎謙三を見て、イギーとダブッてし まいました。

遠藤ミチロウ「AIPA」

再結成スターリンはどうにもこうにもいただけなかったが、ここのところアコース ティック・ソロで活動しているミチロウさんはすごい。これは集大成的な二枚組ベス ト。詞がすごい。声がすごい。シャウトがすごい。アコースティック・ギターにパー カッション、ベース、ハープが少々。なのになんでこんなに過激な音楽を演れるんだ ろう。腹をくくったベテラン・パンク・シンガーの底力を見せつけられた。以前サイ ン会に行ったことがありますが非常に小柄でシャイなかんじのお兄さん(50だけ ど)でした。ここに収められているのはどれも名曲ぞろいだが一曲だけ挙げるとする ならば、ボブ・ディランの曲にミチロウ節で日本語詞をつけた「天国の扉」。この曲 はマジでひとを殺傷する能力がある。

イヌ「メシ食うな!」

今では作家・町田康として文学界のカリスマ(あるいはアイドル)として大成功をお さめているが、やはりわれわれ世代には「町田町蔵」の響きがピンと来る。とはいっ てもこのバンドの存在を知った時はすでに伝説になっていたのだけれども。当時19 歳の町蔵の声にはすごいインパクトがあった。唯一歌のうまいパンク・シンガーで あった(実際、後年「パンク歌手」というイカす称号を名乗っている)。この人の言 語感覚は昔からとびぬけていて、「イヌ」の次は「フナ」、「人民オリンピックショ ウ」「至福団」「ミラクルヤング」「絶望一直線」などメンバー全員が賛同している とは思えない奇っ怪なバンド名で後ろ向きな活動をしていたが、当然金になるわけも なくどんどん煮詰まっていって、酒ばっかり飲みはじめちゃうのだけど、その時代の 経験からダメ人間文学の傑作「人間の屑」「河原のアバラ」などが生まれたわけで、 そういうこともあるわけだから、現在無職でカード差し押さえで借金60万の当サイ トのエンジニアの工藤くん、自分に負けないで。
  
コントーションズ「BUY」

ピストルズとかのロンドン・パンクはもう聞かなくなったけど、いまだにグッとくる のがニューヨーク・パンク勢である。中でもいちばん好きなのがコントーションズの このアルバム。痙攣的ファンク・ビートにジェイムス・チャンスのしゃくりあげ唱法 &奇形的なサックスをのせてエンジン・フルスロットルでぶっとばす!チキチキマシ ン猛レースだったらもうとっくに車体とか飛んでます。エルウ”ィスの「監獄ロッ ク」のカバーも収録されているが、これなんかもうフルコースのディナーを全部ごは んにぶっかけて猫まんま状態にされて「食え!」って出されたような感じ。とにかく 全篇にわたって一寸のスキもなくぶちこわれた名盤。

ザ・トラッシュメン「サーフィン・バード」

これはもうタイトル曲につきる。はじめて聞いた時はあまりのカッコよさ&カッコ悪 さに大笑いしたもの。1964年ミネソタ州のバンドによるサーフ・パンク・クラ シック。当時はものすごく過激に聞こえたのではないだろうか。だいたい日本人には 「ばばーどわどわど」「んまーまままぱぱ」とわめいてるだけにしか聞こえませんも の。一応曲の途中でブレイクがあって「さあふぃんばあどぶるるるるんぎゃあもぎゃ あんまままぱぱんまままま」とかぶちまけたあとに演奏が再開するんだけど、活字で は何が何だかわからんと思うのでもうやめ。キューブリックの「フルメタル・ジャ ケット」の中でも使用されてます。アルバム自体は、まあ、ビーチボーイズです。

ヘイゼル・アドキンス「LOOK AT THAT CAVEMAN GO!」

パンクの精神がドゥ・イット・ユアセルフだとするならば、それを50年代から実践 し続けているロカビリーの怪人。わめきちらすボーカル・変拍子入ったギター・自分 で叩くバスドラ&ハイハットというワンマン・バンド・スタイルは現在も不変。もと もとロカビリーというのは垂直なカクカクしたビートが少しフリーキーなんだけど、 この人はそれがもっと極端というか。初期のベストは全部おんなじに聞こえるミニマ ル状態で、その辺はラモーンズに通じるかもしれない。ラモーンズのほうがずっとま ともだけど。これは出所不明のライブ・アルバム。カウボーイ・ハットをかぶった田 舎のアメリカ親父が鼻息荒くわめきまくる変態ロカビリーの名盤。新宿の輸入盤屋 「ビニール」でまだ買えるかも。

小林旭「黒い傷痕のブルース」

叫ぶだけがパンクではない、と教えてくれたのがマイトガイ・アキラの兄貴であっ た。どこから出てくるのかわからないカン高い声を聞くとかるーくトリップする。今 手元にあるのが巻上公一がオルガン・ジャズ的なアプローチでカバーした「女を忘れ ろ」収録のこのアルバムなのだが、やっぱイイですよオリジナルは。アキラ・グルー ブの渦には誰も勝てないってば。特に「アキラのまっくろけ節」にはもう降参。ドド ンパ・パンクという彼にしかできない表現を聞くことができる。



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